留学体験記
情報理工学系研究科・知能機械情報学専攻博士課程
松本啓吾さん

ドイツ・ハンブルク大学に留学した松本啓吾さんに留学体験記を寄稿いただきました。

情報理工学系研究科・知能機械情報学専攻博士課程2年の松本啓吾です.本インターンシップは,日本学術振興会若手研究者海外挑戦プログラムの支援を受けたものになるため,リーディングによる支援を受けた場合と手続きや渡航滞在費などは一部異なる部分があるかもしれませんが,現地での生活の様子や研究活動についてはご参考にしていただけるかと思います.

はじめに

私は,VR空間における空間知覚について研究しています.特に,VR空間を歩行するユーザに対して介入操作を行うことで限られた実空間で広大なVR空間を歩行可能にするRedirected Walkingを中心テーマとしています.今回のインターンシップでは,Redirected Walking分野で最も引用回数が多い論文を執筆した先生が主宰する研究室に研究生として滞在しました.

研究室.左手前が自分のデスク.

受け入れ先が決まるまで

国際学会で毎回先生に声をかけて顔と名前を覚えてもらっていたことが大きいかと思います.また,渡航滞在に必要な予算をこちらで用意したことによりスムーズに受け入れてもらうことができました.

キャンパスのバーベキューパーティ

現地での研究の様子

本インターンシップでは,バーチャル環境およびドローンを用いたテレプレゼンス(以下,DTP)環境における鉛直方向のリダイレクションの閾値の客観評価および,DTP環境における鉛直方向のリダイレクションのアプリケーション開発に従事しました.
はじめにバーチャル環境における鉛直方向のリダイレクションの閾値を客観的に評価するためにヘッドマウントディスプレイとバーチャル環境のみを用いた実験環境を構築しました.
計15名の実験参加者から収集したデータからバーチャル環境における鉛直方向のリダイレクションの閾値を得ています.
この閾値は動作量と一定の相関があることがわかりました.
並行して,ユーザの動きに連動してドローンを制御するシステム,および,全天周カメラからの映像をリアルタイムでヘッドマウントディスプレイに表示するシステムの開発を行いました.
これらのシステムを統合することにより,DTPシステムを構築しました.このDTPシステムにバーチャル空間における鉛直方向のリダイレクションの閾値を適用することで,ドローンを直観的であるにもかかわらず無理のない範囲の動作で制御することが可能であることを確認しました.
また,このDTPシステムを用いてDTP環境における鉛直方向のリダイレクションの閾値を計測する実験環境を実装を終えています.
帰国後も,引き続き受入研究者であるFrank Steinicke先生および共同研究メンバーと密に連絡を取り,研究を進めています.
今後追加実験を行い,解析した研究成果についてはVR分野における最も権威のある国際学会であるIEEE VR 2020への投稿を予定しており,最終的には当該分野で最も権威のある論文誌の一つであるIEEE TVCG (Transaction on Visualization and Couputer Graphics),または,オープンアクセスジャーナルであるIEEE Accessへの採録を目標としています.

自宅

おわりに

初めての長期海外留学であったため,様々な刺激を受け,多くのこと学んだ4カ月半でした.ドイツではドイツ語が公用語でありながら一定水準以上の英語も話せるドイツ人も多く,また研究室では英語が公用語であったため生活面・研究面でも大きく困ることはありませんでした.しかし,役所での手続きや日常生活におけるやり取りなど英語を利用できない状況で問題が生じた際に周りの人に何度も助けてもらったことはとても感謝しています.

ハンブルクの街並み


本インターンシップを通じて得られたことは大きく次の2つです.
第一に,海外の研究者との共同研究を通して,日本との文化の違いや環境の違いなどを肌で感じる事ができ,研究への取り組み姿勢や休みの取り方など学べたことです.
特に,時間のメリハリがしっかりとしており集中している時と休憩中の落差が短期間で大きな成果を産むコツなのではないかと感じました.
また,昼食などの際に環境やプライバシー,動物保護問題など様々な議論が活発に行われていたことも印象に残っています.
このように共同研究を通して海外の研究者の考え方やライフスタイルに感銘を受けた一方で,日本における研究も国際的に十分に通用すると感じる場面が多々あり,世界に向けて発信することや各国の研究者との個人的な関係を築くことの重要性を改めて感じました.

港町ハンブルク


第二に,海外研究者との貴重な繋がりを築けたことです.
派遣先の研究室のメンバーはドイツ,ギリシャ,イラク,イラン,中国,コロンビア出身と非常に国際的であり,当初は彼らの自己主張の激しさに驚きと戸惑いを覚えましたが,帰国前には食事や旅行に出かけるほどに打ち解けるなど,かけがえのない友人を得ることができました.
彼らとまた一緒に研究し,論じ合えるようにこれらからも研鑽を積んでいきたいと思っています

ハンブルクのお祭りHamburger Dom

寄稿:松本啓吾