活動報告
工学系研究科・電気系工学専攻修士課程
竹内雅樹さん

失われた声を取り戻すデバイスSyrinx プロジェクトリーダーの竹内雅樹さんに活動報告を寄稿いただきました。

大学院工学系研究科電気系工学専攻修士課程1年の竹内雅樹と申します。2019年の4月からGCL生として活動をしています。私は現在、失われた声を取り戻すデバイスSyrinx (以前の名前: NUTONE)というプロジェクトのリーダーおよびエンジニアとして開発を続けています。今回はMicrosoft社が主催するImagine Cupのアジア地区大会で優勝し、5月にシアトルで開催される世界大会に出場することになった(プレスリリース)ため、記事を寄稿することになりました。ここまでの経緯、私たちのデバイス、そしてこれからのプランについてそれぞれ述べていきたいと思います。

ここまでの経緯

まず、私がこのプロジェクトを始めるきっかけとなったのはパートタイマーで働いている理化学研究所の研究室のボスに教えてもらい、YouTubeで食道発声の方の映像を見たことです。食道発声とは喉頭がんなどで声を失った方の発声方法の1つです。実際に拝見すると、人間の出している声からは遠く、かつ練習も大変そうでした。この人たちのために何かできることはないか考えました。
その時に東大の産学協創推進本部が主催のSummer Founders Program (SFP)に出会いました。SFPは、実際に社会やユーザーに対してデプロイするプロジェクトを支援するもので、最大30万円のお金をもらって開発をすることができます。私は即座にこれに申し込み、そこで管理人をしている産学協創推進本部 本郷テックガレージ ディレクター 松井克文さんと相談しました。すると「食道発声の方を支援するというのはいいね!」と言ってくれて、ぜひ実際のユーザーに会った方がいいとアドバイスをしてくれました。
そこで私は食道発声の発声練習会を行っている銀鈴会に伺いました。そこで会長や指導員の方と出会い、課題を伺いました。皆さんは人間に近い声を出したい、日常生活で話していても誰にも見られないようにしたい、という願望を持っていました。そこで、私は声を出せなくなった方の課題の解決に取り組むことにしました。
最初は1人でスタートしましたが、SFPの定例会で工学部電子情報工学科3年生のアン・ジェソル君と工学部電気電子工学科3年生の松藤圭亮君に出会い、一緒にプロジェクトを進めることにしました。それからはプロダクトを作っては銀鈴会の方にフィードバックをもらうことを繰り返し、分からないことや困ったことが生じたら、東大の教授の先生方にアドバイスをいただいたり、本郷テックガレージの学生スタッフに協力していただいたりしながら製品開発を進めてきました。

銀鈴会の方にフィードバックを頂いている様子.

SFPの中間発表後、アン君の後輩である工学部機械工学科2年生イ・グンハク君がハードウェアエンジニアとして入ってくれたことで、開発のスピードはさらに速くなりました。そして、SFPが終わってすぐの9月末に行われるTodai To Texasでファイナリストに選んでいただき、今年の3月にテキサス・オースティンで行われるSXSWに出場することになりました。

銀鈴会の方とチームメンバーのTTT受賞写真

その後、このようなヘルスケア関連の学生開発コンテストの大会としてMicrosoft ImagineCupという大会を教えていただき、そちらのオンラインフォームに申し込んだところ、まず1月3日にアジアの10チームに選ばれました。そして2月19日、オンラインで開催されたアジア地区大会の決勝でそのうち2チームに入ったことで、5月のシアトルで行われる世界大会に出場することとなりました。後半は少しさらっと書いてしまいましたが、ここに至るまで私は大変多くの方々の支援を受けてきました。皆様にはこの場をお借りして改めてお礼を言いたいと思います。ありがとうございました。

私たちのデバイスについて

私たちは、ユーザーの課題を解決するために、従来声を失った方が使用している電気式人工喉頭 (Electrolarynx, EL)というデバイスに着目しました。ELは以下の画像にあるような円柱型のデバイスで、ボタンを押すと先端が振動します。

EL(電気式人工喉頭、銀鈴会Webサイトより転載)

これを喉に押し当てると、口パクをするだけで声が出ます。しかし、声を失った方はこのデバイスをあまり使用していません。理由は声がロボットのようになってしまうのと、喋るときに片手がふさがってしまうのを嫌っているからです。そこで、私たちはハンズフリー型で、かつ機械学習を用いることで人間に近い声を出すデバイスSyrinxを開発しました。より詳しく知りたい方は以下のウェブサイトをご覧ください。
https://syrinx.community/

現時点でのデバイスの写真

これからのプラン

私たちの目標は商品の製品化です。そのために今後は研究として暫く進める一方で、タイミングを見て起業することを考えています。しかし、まだ私たちは外国の方のフィードバックを受けることができていません。そのため、SXSWでは展示をただ行うだけでなく、積極的に医師の方、あるいは音響の研究をしている方とコミュニケーションをとり、私たちのデバイスのフィードバックやアドバイスをいただいたり、あるいは一緒にやってもらえないかを伺ったりしたいと思います。一方、ImagineCupでは優勝を目指す一方で海外の学生とつながるチャンスなので、ぜひ仲良くなりたいと思います。

最終的には、声を失った方が私たちのデバイスを使うことで人間に近い声を出し、堂々と街中を歩けるような世界にしていきたいです。

※文中の写真の掲載についてはご本人の承諾をいただいています。

寄稿:竹内雅樹