GCL生による共同研究
荒川清晟さん(学際情報学府)
野寄修平さん(医学系研究科)

GCLコース生の荒川清晟さん(学際情報学府)と野寄修平さん(医学系研究科)による共同研究の成果が、独立行政法人経済産業研究所(RIETI)のディスカッション・ペーパーとして公開されました。分析結果を踏まえつつ、政策的含意を記述したノンテクニカルサマリーも掲載されており、GCLの目指す研究成果の社会還元を意識した研究になっています。

「大都市から地方への移住における社会経済的要因の影響-Elastic net回帰を用いたポアソン重力モデルによる分析-」
論文
研究概要(ノンテクニカルサマリー)
   

背景

近年、東京をはじめとする大都市への人口の集中が大きな問題となっています。人口の集中により災害への脆弱性が生じ、また出生率の低い都市に人口が集中することで、日本の出生率の更なる低下につながると懸念されています。
特に近年、東日本大震災や新型コロナウイルス感染症の感染拡大といった災害が発生しており、大都市への人口集中と、それに伴い生じる災害への脆弱性への早急な対応が必要です。また、国外に目を向けてみると、持続可能な開発目標 (SDGs)でも、目標11「住み続けられるまちづくりを」が挙げられており、レジリエントな都市づくりは世界的にも求められています。

方法

私たちの研究は、国内の市区町村間人口移動を対象に、大都市から地方への人口移動について分析を行ったものです。貿易や人口移動など、地域間の相互作用を解析する際に一般的に用いられているポアソン重力モデルを用い、人口移動に関連する社会経済的因子を抽出しました。
ポアソン重力モデルに投入される社会経済的因子は互いに相関の強いものが存在し、多重共線性の問題からそれらの変数を同時に扱うことができません。そこで、正則化回帰の1つであるElastic net回帰を用いこの問題を解決しました。

結果

Elastic net回帰による変数選択においても、重力モデルの基本変数である人口規模、地域間距離は選択され、回帰係数の絶対値は他の変数に比べて大きかったこと、先行研究において使用されている39の説明変数を全てElastic net回帰に投入した際には、21の変数が大都市から地方への人口移動と関連があるとして選択されることを明らかにしました。

政策的インプリケーション

1. 近隣大都市からの移住者誘致
重力モデルの基本変数である移動元、移動先の人口と距離の回帰係数の絶対値を比較すると、距離の方が大きく、人口が多い遠方の地域から移住者を誘致するよりも、近くの大都市から移住者を誘致した方が効果的であると考えられます。

2. 高等学校・大学新卒就業時の誘致
移住元の第1次産業、第2次産業の比率は人口移動数と負の関係にあり、第1次産業、第2次産業就業者をターゲットとした移住誘致は、それほど効果がない可能性があります。
しかし、これは同時に第1次産業、第2次産業就業者は、移住しにくいことを示唆しており、高等学校、大学卒業後の就業時に移住を誘致することができれば、その地域に長く定住する可能性があると考えました。

寄稿:荒川清晟