第1回GCLSプレゼンコンペ受賞者寄稿
坂本慧介さん

第1回GCLSプレゼンコンペティションでソーシャルICT賞、オーディエンス賞を受賞された坂本慧介さんに研究紹介の記事を寄稿いただきました。

自己紹介

東京大学連携研究機構不動産イノベーション研究センターで特任助教を務めている、坂本慧介と申します。センターでは、都市工学専攻の学生時代から一貫して掲げている「都市をとかす」というコンセプトにもとづき、人口減少都市における空き家・空き地対策や大都市圏郊外都市におけるエリアマネジメントといった研究テーマに取り組んでいます。

受賞の感想

「私は研究で社会をこう変える」というプレゼンコンペの問に対しては自分なりのビジョンを持ってはいたものの、ICTを専門分野として研究されている方々と並ぶと「畑違い」かなという認識を持っていたので、まさか賞をいただけるとは(しかも、ソーシャルICT賞とオーディエンス賞という二つの賞を!)思っておらず、受賞時にはただただ驚くとともに、「自信をもって自分のアイデアやビジョンを伝えれば、専門分野は違ってもちゃんと届く」ということを実感することができ、今後の研究活動につながる大きな財産となりました。

プレゼンの概要

まず、私の専門分野である都市計画について簡単に紹介し、人口減少時代においては、新たに「都市をつくる」だけではなく、流動性が低くて使いにくい「都市をとかす」ことの重要性を述べた後、修士・博士課程において取り組んだ「空き家・空き地の発生メカニズム」の研究について説明しました。

「都市をとかす」というコンセプトを伝えるためだけのスライド

研究においては、様々な社会条件・空間条件との関係から空き家・空き地の発生メカニズムを明らかにすることができましたが、「研究と社会との接点」という意味において特にフォーカスしたのは、「研究開始時に利用可能な空き家・空き地データが存在しなかったこと」「研究対象地の鳥取県鳥取市・栃木県宇都宮市の都市部住宅地の全域を自転車により走破し、全空き地データを取得したこと」「そうしたデータ取得の取り組みが鳥取市・宇都宮市の行政に認められることで、目視確認が困難な空き家については行政データの提供をいただけたこと」です。このように「目的に向かって泥臭く活動することが、思いがけない信頼関係につながる」ということが、「研究で社会を変える」ためには非常に重要であると考えています。

調査・活動により明らかになった空き家・空き地の分布

しかし、研究によって空き家・空き地の発生メカニズムを明らかにしただけでは、都市は「とけ」ません。そこで、流動性の低い空き家・空き地といった空き空間に対する働きかけをあれこれ妄想する中で生まれたアイデアが空き空間の情報共有プラットフォームである「空き地図」です。空き地図は、空き空間の所有者や近隣の住民等が空き空間に関する悩みを地図に登録し、所有者の承諾を得られた場合には空き空間を使ったイベントを行うことによって、空き空間の悩みを楽しみに変え、個人資産という観点から近くて遠い存在だった空き空間を地域に開き、地域で管理・活用するという視点を醸成することを狙っています。

しかし、空き地図を作っていきなり世に出しても、利用者は限られるでしょう。日本では空き家・空き地の問題が一般論として懸念されてはいるものの、個々人のレベルではまださほど深刻に捉えられていないからです。そこで、空き地図実装のモデル都市として、新潟県村上市を取り上げました。村上市は、2019年6月の山形県沖地震において倒壊家屋の多くが管理不全の空き家であることがわかり、空き家対策への機運が地域で高まっています。この機運を捉えて、空き地図の取り組みを村上市から発信できればと考えています。

空き地図の実装には、情報提供者やプライバシーの問題をはじめ、乗り越えなければならないハードルが数多く存在します。しかし、まず可能な取り組みとして、OpenStreetMapをベースとして住民自ら地図作成を行う「空き地図ワークショップ」を行い、地域での空き空間情報の共有をごく身近なものへ浸透させていきます。そうした活動の積み重ねによって、世界中でアクセス可能なプラットフォームとして「空き地図」が利用される日まで、活動に邁進していく所存です。

空き地図の実現に不可欠な社会とのつながり

プレゼンの工夫

Zoomを使ったプレゼンということで、会場の雰囲気や聴衆との距離感を掴みにくい点に難しさを感じましたが、逆に言えば「とにかくモニターのカメラに目線を向けてプレゼンする」という点に集中したことが、結果的に良かったのではないかと考えています。また、様々な分野の方が聴いてくださっていることを意識し、「専門用語は使わず、できるだけ一般的な言葉で自分の活動を説明すること」「スライドの情報をスリムにし、メッセージがシンプルに伝わるよう構成すること」に注力しました。

副賞の活用

副賞につきましては、空き地図ワークショップを行うための旅費や運営費、システム構築に必要な機材の購入費に充てさせていただきます。このような形で私の研究活動を支援していただき、改めて謝意を述べさせていただくとともに、今後も何らかの形で協働させていただけましたら幸いです。ありがとうございました。

寄稿:坂本慧介