ATRオープンハウス2019
2017年3月にGCLをご退官された浅見 徹先生が代表取締役社長としてお勤めになる ATR(株式会社国際電気通信基礎技術研究所)のオープンハウスイベント2019に伺いました。
2019年10月31日、11月1日に開催されたATRオープンハウスイベント2019では、「研究開発・イノベーション拠点が拓く未来社会」をテーマに、脳情報科学、ライフ・サポートロボット、無線通信、生命科学分野の研究開発成果等について、多彩な展示・デモンストレーション等が行われました。
まずは、浅見先生より伺った「デザイン人材とイノベーション人材」について紹介し、その後、浅見先生ご注目の研究内容について紹介します。
(※ATRについての詳しい紹介は、GCL NEWSLETTER 第50号(2017.12)を参照)
デザイン人材と真のイノベーション人材
イノベーションを促進するためには、デザイン人材とイノベーション人材が必要だと言われています。デザイン人材とは、研究者ではなく、技術とビジネスを繋ぐ人材です。デザイン人材は、研究者としてのセンスとは全く異なるセンスが求められます。デザイン人材になろうと思う人は、様々な人と交流し、ディスカッションを行っていく必要があります。
とはいえ、デザイン人材はセンスが重要ですので、企業等がデザイン人材を育成するためには、まず、デザイン人材になり得るセンスを持っている人を発見することが必要です。そのためには、実際にいくつかの事業をその人にやらせてみるしかありません。ATRでは、リサーチコンプレックス推進プログラムの一環で、プロデューサー育成、海外のピッチコンテストなどの起業家支援を推進しています。
また、イノベーション人材になるには、自分の好きなテーマをじっくりと研究すること、同時に、生活していくためにコンスタントに成果を出す研究をすることが必要です。この2つのテーマを持ちながら研究を行っていかなければなりません。どちらかの研究だけでは、本当の意味でのイノベーション人材にはなれません。イノベーションを生むためには、研究について常に考え続けることが大切です。
世の中の変革を見逃さないために、様々な人と議論し、様々な情報を得ることが大切です。これからの人たちは1つの会社に閉じない働き方をしていかなければならないと思っていますし、GCLの学生にもそのような働き方をしてほしいと思っています。
浅見先生ご注目の研究
ATRでは、様々な研究を行っています。
『DecNefの恐怖記憶克服への応用~実験室から臨床現場へ~』は、実用化のフェーズになり、一部PTSD患者の症状改善に成功しました。『ヒトの脳活動から心の中のイメージを再構成, アートへの応用』は、脳情報から任意の視覚画像をリアルに再現することに成功しました。ピエールユイグ氏は、この頭に思い浮かんだ絵を用いて個展を開催しています。
『自動運転と手動運転の切り替えが可能な運転シミュレータ』は、自分が運転しているつもりでも、危ない時には自動運転がサポートしてくれる技術です。『人とロボットの共生に向けた深層インタラクション技術』は、将来が楽しみな研究です。今後は、人間にセンサーをつけ、人がロボットと話す際にどの程度のストレスを感じているのかなども把握していく予定です。
このように様々な研究をATRでは行っておりますので、GCLの学生の方々も来年のオープンハウスイベントに是非お越しください。
文責・写真:荒川清晟